「指数平滑移動平均」とは?

投資

株価の値動きの傾向、例えば「そろそろ下がりそう」「そろそろ上がりそう」「下降傾向(トレンド、という言葉をよく使う)から上昇傾向に切り替わったっぽい」とか、そうしたことは、様々な指標を使って、現状を把握して、将来の予測をしていきます。

その中でデイトレードをする人がよく使う指標のひとつとして、”9 EMA” とか “20 EMA” なるものが、ちょくちょく出てきます。これが、どんなものか、調べてみました。

9 EMA とは?

9 EMA は、対象区間を “9” とした、指数 (Exponential) 移動 (Moving) 平均 (Average) というものを意味します。日本語では「指数円滑移動平均」というようです。

単純な移動平均よりも、直近の移動平均値に重みを置くような計算になります。

指数移動平均 (EMA) の求め方は、次のような式になります。

\begin{aligned}
EMA_t &= \alpha P_t + (1-\alpha) EMA_{t-1}\\
\alpha &= \frac{2}{N + 1} 
\end{aligned}

ここで、”EMA” は指数移動平均、”P” は株価です。添え字で書いてあるのは、ある時刻 t を起点 (t = 0) として、その次のポイントでのそれぞれの値です。

もしある日の寄り付きを t = 0 として、1分足のチャートを見ているとしたら、t = 0 が 9:30am ET、t = 1 が 9:31am ET、… です。

EMAt は t ≧ N – 1 (t = 0, 1, 2, …) で定義されます。

EMA の初期値 (つまり t = N – 1) は次のように決めます。つまり、単純な平均値 (SMA) です。

\begin{aligned} 
EMA_{N-1} &= SMA_{N-1} \\
&= \frac{1}{N} \sum_{i=0}^{N-1} P_i
\end{aligned}

さて、EMA の式を見ると、現在 (時刻 t) の EMAt は、現在の株価に α をかけたものに、ひとつ前の時刻の EMAt-1 に (1-α) をかけたものを足し合わされる形になっています。

ですから、ある時刻 t の指数移動平均値がわかっているときに、時刻 t + 1 のときの値を求めるのはとても簡単です。

つまり、N = 9 のときは、

\begin{aligned}
\alpha &= \dfrac{2}{N+1} \\
&= \dfrac{2}{9 + 1} \\
&= 0.2
\end{aligned}

となります。α = 0.2 ですから、時刻 t の時点での EMA は次で求まります。

\begin{aligned}
EMA_{t} = 0.2 P_t + 0.8 EMA_{t-1}
\end{aligned}

パッと見て、「あれ、現在の株価の重みは 0.2 しかないの?」と思いたくなりますが、過去 (時刻 t-1 とか t-2) の EMA は、

\begin{aligned}
EMA_{t-1} &= 0.2 P_{t-1} + 0.8 EMA_{t-2} \\
EMA_{t-2} &= 0.2 P_{t-2} + 0.8 EMA_{t-3} \\
\cdots
\end{aligned}

という風になりますから、式を展開すると、

\begin{aligned}
EMA_t &= 0.2 P_t + 0.8 (0.2 P_{t-1} + 0.8 EMA_{t-2}) \\
&= 0.2 P_{t} + 0.16 P_{t-1} + 0.64 EMA_{t-2} \\
&= 0.2 P_{t} + 0.16 P_{t-1} + 0.128 P_{t-2} + 0.512 EMA_{t-3}
\end{aligned}

となるので、現在時刻の株価の重みは 0.2、ひとつ前の株価は 0.16、その前は 0.128 という風な調子で、過去の株価の重みが少しずつ減って足し算された形になっていることがわかります。

元の定義の数式を展開すると、ちょっとややこしいですが・・・

\begin{aligned}
EMA_t &= \alpha P_t + (1-\alpha) EMA_{t-1}\\
&= \alpha P_t + (1-\alpha) [ \alpha P_{t-1} + (1 - \alpha) EMA_{t-2} ]\\
&= \alpha P_t + \alpha(1-\alpha) P_{t-1} + (1-\alpha)^2 EMA_{t-2} \\
&= \alpha P_t + \alpha(1-\alpha) P_{t-1} + \alpha (1-\alpha)^2 P_{t-2} + \alpha (1-\alpha)^3 P_{t-3} + \cdots
\end{aligned}

という風に、時刻 t の移動平均値を求めるために、昔の移動平均の値を、指数関数的に重みを小さくして足し合わす形になっています。

ちなみに、「単純な平均を計算する」という場合、対象となる値を全て足し合わせて、要素の数で割る、という操作をしますよね。

ところが、「要素数で割る」という操作が上の式で見えてこないので、「これって、平均なの?」と思いたくもなります。

しかし、単純移動平均 (SMA) の場合は、たとえば 5区間の SMA であれば、

\begin{aligned}
SMA_t &= \dfrac{\overbrace{P_t + P_{t-1} + P_{t-2} + P_{t-3} + P_{t-4}}^{\text{5個}}}{5} \\
&= 0.2 P_t + 0.2 P_{t-1} + 0.2 P_{t-2} + 0.2 P_{t-3} + 0.2 P_{t-4}
\end{aligned}

という風になるので、「5区間の単純移動平均」は「重みを一律 0.2 として計算区間の株価を足し合わせる」といえます。

つまり、割り算をすることが大事なわけではなくて、対象区間の株価を、どのように重み付けして扱うか、ということがキモになると考えられるので、上の指数平均もやはり「平均」ということなのでしょう。

と、ここまでで、なんとなく腑に落ちたので、EMA についてはこのくらいにしておきます。

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